みるくとりんご[短編]
帰り道、千葉は私を家まで送ると言ってくれた。



ちなみに私の家と千葉の家は正反対。



こちらとしては少し気が引ける。




「ほんと、私防犯ブザー持ってるからだいじょぶだよ?」



「いーから送られとけよ」




そう言って、私の腕を掴んで強引に歩き出す千葉に、私は諦めて送ってもらうことにした。




「アンタ意外に優しいんだね」




「うん。俺、意外と優しいよ」



そう言って笑顔でこちらを見た千葉に、不覚にもドキリと胸がときめいた。



その顔は反則だろ。




私の家は、ここからさほど離れてないので、くだらない話をしているうちに、気づけば家の前まで来ていた。



早いもんだ。



「じゃーまたね」


「ああ」



なんてそっけない返事をして去っていく千葉の背中を、見えなくなるまで見送った。


そのときの心情は、リンゴのように甘酸っぱくて、ミルクのように、まろやかだった。


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それは何の味? 恋の味?
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