みるくとりんご[短編]
やがて、千葉は口を開く。







「……俺の兄貴は、ほんとに族に入ってて、俺はいつも兄貴のとばっちりを受けて、何度も危険な目に遭ってきた。
だから、ナイフは手放せなかった。
もう兄貴は族も抜けて、今じゃ落ち着いてるけど、あんときの恐怖がまだ抜けなくて、やっぱり手放せない」





――ダセーだろ?




千葉はそう言って切なげに笑った。



ああ、コイツは、ただ臆病になってるだけなんだ。



そう思った。




「髪も、クォーターってのは本当だから、茶色かった。
だけど、それを否定する教師に腹が立って、逆にもっと明るく染めてやった。
だから地毛ってわけじゃない」




そして、変に意地っ張りだ。




だけど、こいつは、意地の張り方を間違っている。




「あんたって、素直じゃないね」



「は?」




怪訝そうに眉をしかめる千葉をよそに、私は続ける。





「私を孤立させたのは、仲間が欲しかったからでしょう?」





「………」



千葉は何も言わなかった。



ただ、その綺麗な瞳に、私を映すだけ。
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