みるくとりんご[短編]
みるくとりんご
その後、あらわになった事実が1つ。
私はバツイチじゃなかったってこと。
私がサインした婚姻届は、提出されていなかった。
相手が、寸前でまだ十六歳である私が籍を入れることを躊躇ったらしい。
だけど不思議と、ショックや不満は無かった。
きっともう、それは『過去』になっていたから。
みるくとりんご
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「次の時間何だっけ?」
「数学」
「げぼー」
「げぼ言うな」
三時間目の休み時間。
私は希美と一緒に早弁をしていた。
帰ってきた日常。
だけど一つだけ、変わったこと。
それは、休み時間にいつも席に座っていた、千葉がいないってこと。
「千葉君、最近楽しそうだよね」
希美の言葉に反応して、千葉の方に目をやると、楽しげに他の男子と早弁をしている姿が映った。
「確かに楽しそうかもね」
そんなことわ言ってるうちに、ふと千葉と目が合った。
すると千葉は、優しく微笑む。
「あんた顔赤いし」
「うるさい」
「千葉君に告られたんでしょ?
なんて返事すんの?」
「さあね」
私は先日、千葉に告られた。
『好きなんだけど』なんてぶっきらぼうに言われただけなんだけどね。
今度の恋は最後の恋にしたい。
なんて淡い夢を見ていたがら、恋愛には慎重になっていた私。
正直、少し戸惑った。