野良猫族の奮闘記
何で…何で、どうして?!

私は塀を走っていた。
顔は涙でぐちゃぐちゃで、鼻水だって出てるけど、誰も私の姿を見る事ができないんだから、この際そんな事どうでもいいんだ。
それよりも…さいとくんが…。



帰り道、どちみち家が近いから、一緒に帰ったんだ。
でも、さいとくんは何だか元気がなかった。
ずっとそわそわしたり、遠くを見たり。
私の事なんか気にしてなかった。
さりげなく聞いた、「好きな人いないの?」の言葉。
私はどんな答えを望んだのかな…。
そのしつもんを口にしたら、さいとくんは顔を真っ赤にして、否定の言葉を述べた。
まだ誰だかわかってもいないのに、私には分かっちゃったんだ。
きっとねねこが好きなんだなって。
それが悲しくて、苦しくて、ねねこがいやになって、そう思う私が嫌になって、気付いたら私は猫になって、私の姿は誰にも見えなくなってた。

力の暴走…。
そのまま私は走り出した。 涙が溢れて止まらなかった。
辛くて辛くて、塀の上を飛ぶように駆けた。
途中で、何かにぶつかって、私は塀を転げ落ちた。
足が痛い…頬もすったみたい。
身体中がじんじん熱い…。
涙が、また溢れてきた。
惨めだなぁって、思う。 自分でも。
ちっぽけで、誰にも気付かれない自分。
このまま、力の暴走が収まらなかったら、誰にも気付かれずに死んで行くのかな。
そんなの、そんなの嫌だ!
誰か私を見つけてよ!
私はここにいるんだよ!? 何で…何で気づいてくれないの?!
私はうずくまって泣き続けた。
辛くて辛くて堪らなくなって、自分が不幸で、自分のこの能力が嫌になった。

もし、こんな私を見つけてくれるなら…
その人こそ…


「あれ? 猫さん…? 何だか透けて…」





一筋の希望___




< 6 / 7 >

この作品をシェア

pagetop