愛のうた。
「・・・」

俺は黙り込んだ。


沙知と別れるなんて無理だ。

そんな事考えたこともなかった。


「しょうがないわね。少し考えさせてあげる。その代りデートしてね。
う~ん、夏休み明けまで待ってあげるから、明けたら沙知と別れてあたしと
付き合って?」


何なんだよ、このワガママは・・・

「無理に決まってるだろ。俺と沙知が別れるなんて絶対にない」

「じゃあこの写真、洋介に売るわ。たくさんの男が沙知に食いつくわね~
襲われても知りませんよ?」


ハルカがケータイを開き、洋介に電話しようとする。


「やめろ!!分かった、分かったからやめてくれ」


俺は沙知を守るのに必死で咄嗟にそう言ってしまった。


「もう了承したって事だから。じゃあまた今度」


ハルカは何事も無かったように去ってしまった。


「・・・くそっ!!」

俺は何もできなかった。

情けねぇ・・・

俺に与えられた選択肢は沙知と別れる事だけ。



デートのたび満面の笑みで話しかけてくる沙知の顔が見れない。

メールも返信ができない。


俺は沙知さえいればいいんだ。

沙知で俺が成り立っている。

そんな沙知を失うなんて出来ねぇよ・・・


ただ、悔しさと後悔ばかりが増すばかりだった。


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