愛のうた。
「シュン!!おはよう」

新学期の朝。

いつものように玄関を出ると沙知が待ち伏せしていた。

いつも遅いくせに、なんでこんな時に早いんだよ・・・

笑顔で手を振ってくる沙知の瞳は笑っていない。


「はよ。遅刻するから早く行くぞ」

わざと冷たくして距離を置いて歩く俺。


そんな俺に急いで後ろから沙知がついていく。

小さな沙知の足音が閑静な住宅街に響く。

沙知が俺の制服のシャツをキュッと握った。


「シュン、最近冷たいね」

沙知がうつむく。

「そうか?別に普通だけど」


俺の言葉に沙知は唇を噛み締める。

そして泣きそうな声でこう言った。


「私の事・・・・・・嫌い・・・・・・?」

「・・・っ・・・何でそんな事聞くんだ?」

沙知がシャツをさらに強く握る。

分かってるよ。

沙知が俺の異変に気づいてる事。


「ううん、何でもない!ごめんね、変な事聞いちゃって」

無理して笑うなよ。

俺も辛い。


そしてこんな選択しか出来ない自分が憎くて仕方ない。

沙知・・・ごめん。


俺にはもうお前を守ってやる事は出来ない・・・--
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