愛のうた。
「辛い別れ。」 シュンside
「俊太郎の家、行きたいなー」

俺の耳元でわざとらしくそう囁く、ハルカ。


「・・・ムリだ」

「なんで?」

そんなの決まってるだろ。

俺の部屋と沙知の部屋は向かい同士で・・・

暗いのが苦手な沙知はいつもカーテンを開けている。


ハルカの声が響くに決まってる。


「・・・散らかってるから」

ハルカは俺と沙知が隣の家だと知らない。

・・・いや、知られたくない。


「いいでしょぉ~?どうしても無理って言うなら・・・洋介に」

ハルカはそうやって俺をいつも脅す。


俺は弱みを握られてる以上、さからえるはずもない。

さからったら、・・・沙知がどうなるか分からない。


俺は沙知を守りたい。

その一心でハルカの要求に我慢した。



そして今日も。

「シュン、一緒に帰ろう?」

沙知が俺の所に来る。


「ごめん。バイト入ってから」

そう言うと沙知は顔を歪ませるが、すぐ笑顔に戻る。


「そっか、じゃあまた明日」

その言葉を残し、ナナたちのもとへ走って行った。


バイトなんか入ってないし、やってない。

でも無理して笑う沙知を見るのが耐えられない。

ギュっと拳を握りしめる。


俺は鞄を持つと、教室から出た。
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