愛のうた。
「今、水川沙知の事考えてたでしょ?」

ハルカが俺をギロリと睨む。


「・・・・・・。」

「あたしと居る時は沙知の事考えないでっ!」

ハルカの怒鳴り声を体いっぱいに浴びる。


「絶対に考えないで!あたしだけの俊太郎なんだから・・・」


俺は言葉を紡げず、小さく頷いた。


ハルカは納得したらしく、また笑顔に戻った。

考えない時なんてない。


いつだって考えてる。


あの、くりっとした茶色い瞳。

サラサラした淡い栗色の髪。

化粧っけのない愛らしい素顔。


目を閉じればいつだって思い出してしまう。


ハルカ・・・お前は沙知にはなれない。



あっという間に俺の家の前に着く。

「へぇ~ここが俊太郎の家かぁ」

ハルカが周りをぐるりと見渡す。


お願いだから沙知の家に気づかないでくれ。


こんなささやかな願いはすぐ砕け散る。



「ん?この家の表札って・・・水川??」

ハルカが沙知の家の表札を見る。


「水川聡、水川理恵子、・・・水川沙知、水川千沙ぁ?」

ゾクッ・・・!!!


「これって水川沙知と同姓同名じゃん。そう言えば沙知って東校に妹いるって聞いたな・・・確か名前は」


やめろ、やめろ、やめてくれ!
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