愛のうた。
「シュン、話ってなんだ?」

俺は始業式が終わった後、ノゾムを屋上に呼び出した。

まだ春の風は肌寒い。


「俺、沙知と・・・別れる」

その言葉を言った瞬間、風の音とグランドでふざけあっている生徒の声しか聞こえなかった。




「嘘、・・・・・・だろ?」

「こんな嘘つくわけないだろ」

「・・・なんでだ?」


ハルカから、沙知を守るなんて言えるわけがない。

ノゾムらが何かしたら沙知が危険な目にあってしまう可能性が高くなる。

だから俺は嘘をついた。


「好きな奴が・・・出来たんだ」

するとさっきまで動揺していたノゾムの目が一瞬にして鋭く変わる。

そして、いつもは温厚なノゾムが俺に掴みかかってきた。


「ふざけんなよっ!お前、何言ってんだよ。・・・沙知ちゃんの気持ち、考えろよ!!」

「心変りは仕方がないだろ?」


ノゾムは息を切らす。

そして、ノゾムの拳が飛んできた。

殴られたんだ。


「お前は心変わりする奴じゃないだろ!?それは俺が一番知ってる。・・・裏切ってんじゃねぇよ!!裏切ったら信用もなくすんだぞ?」



そんなの、分かってる。

「ごめんな」

俺は謝ることしか出来なかった。


「謝ってすむ問題じゃねぇ!!俺は、俺は・・・お前を信じてたのに。
今度からは俺らが沙知ちゃんを支える。だからお前は二度と俺らに関わるな!」


そう言って俺をもう一発殴るとノゾムは屋上から出た。


沙知も、ダチも失ってしまった。

裏切りは全てを壊してしまうんだ。

俺はその場にうずくまり、ただ涙を流した。


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