Sugar × Spice 〜カレは年下幼馴染〜
15年前、お父さんが心筋梗塞で突然亡くなってから、私たちは家族3人で暮らしてきた。
お母さんは保険会社のセールスレディとして働きながら、私とお姉ちゃんを女手一つでここまで育ててきた。
5つ上の姉・美菜子は、短大を出て保育士として働き、
私も高校卒業後、某中小企業の受付として就職した。
「じゃ、行ってきます」
「いってらっしゃーい。お仕事がんばってねー」
姉に見送られながら、私は気が抜ける思いだった。
姉は昔からああだ。
どこかフワフワしていて、地に足が付いていない。
頼りなくて、…おっとりしすぎにもほどがある。
あれでよく保育士の仕事が務まるものだ。
「さむっ」
外に出て、身震いした。
2月の終わり。
春を迎えるために、1年で一番寒い季節。
お父さんが亡くなったのも、こんな寒い日だった。
「咲!」
玄関を出ると、突然呼ばれ顔を上げた。
「優兄ちゃん!」
向かいの家の玄関の所に、優兄ちゃんが立っていた。
スーツにコートを羽織った姿がカッコ良くて、ドキっとする。
「どうしたの?帰ってるなんて珍しいね」
「あぁ、ちょっとね。咲はこれから出勤?
頑張ってるね。すっかり大人の女性だなぁ、咲も」
そう言って優兄ちゃんは、私の頭をくしゃっと撫でる。