Sugar × Spice 〜カレは年下幼馴染〜
「咲って昔からそうよね。
恋愛に関してはホント臆病なんだから。
合コン誘っても来ないし、告られても興味すら示さないし」
ミカは笑顔を浮かべながら、私にしか聞こえない声で続けた。
「想ってるだけの恋なんてね、時間の無駄よ。
こっちから押し倒すぐらいの勢いでいかないと」
「おっ、押し倒す?!
何言って…」
「おはよう、高宮さん」
ミカを驚いて見た、その時だった。
受付の前で、スリムスーツを身にまとった林田さんが、朝から爽やかな笑顔を向けている。
「おはようございます林田さん」
「顔が赤いけど、大丈夫?風邪?」
「いえ、大丈夫です!」
私が慌てて頭を振ると、林田さんはクスッと笑って行ってしまった。
「…営業推進部の林田浩二、28歳。
アレは完全、あんたのこと狙ってるわね」
ミカがその後ろ姿を、どこか恨めしそうに見る。
「何言ってんの。林田さんがそんなことあるわけないでしょ」
「だから、咲のそういうとこがダメなの!
優兄ちゃんばっかり見てないで、ちょっとは周りにも目を向けてみなさい」
「わかったから、お説教なら今度聞くから」
ミカをたしなめると、私は小さくため息をついた。
林田さんが私のことを好きだなんて、そんなことあるわけない。
いつも受付で挨拶と一言二言交わす程度で、一緒に食事どころか、まともに話したことだってないのに。
それに、“本当の私”を知られたらきっと男の人はみんな離れていく。