Sugar × Spice 〜カレは年下幼馴染〜
末っ子は甘え上手なんてよく雑誌に書いてあるけど、
あんな姉を持って、私たちのために頑張るお母さんを見てたら、誰かに甘えるということに抵抗を持つようになった。
誰かに私の心の全部を許すとか、
私の全てを見せるとか、
思いっきり甘えるとか…
…そんなことしたくない。
私はもう大人なんだって、
一人でも大丈夫だって言い聞かせた。
ただ優兄ちゃんだけが、いつも“本当の私”に気付いてくれてるようで、
したことはないけれど、優兄ちゃんになら私は、本当に甘えられる気がした。
優兄ちゃんなら、全部さらけ出したって笑って受け止めてくれる気がした。
「大丈夫だよ、僕がそばについてるからね」
遠い昔の記憶。
その日はお姉ちゃんが学校の合宿で、お母さんも仕事が遅くて家に誰もいなかった。
私は学校から帰ってきた途端、高熱にうなされ倒れた。
本当は朝から調子が悪かったけれど、誰にも言えずに我慢して過ごした。
「お母さん呼んだから、もう大丈夫だよ。
僕は咲ちゃんのがそばから離れないから、ずっとここにいるからね」
布団の上で、もうろうとした意識の中でその言葉がハッキリと耳元で聞こえた。
暖かな手がぎゅっと私の手を握り、
私も力なくその手を握り返した。
……嬉しかった。
“そばにいるよ”って、なんて心強い言葉なんだろうって幼心に思った。