お姫さまになりたいのっ!
みんながワイワイガヤガヤしてる部室からそっと抜け出し、

私たちは少し冷たい風が吹く中庭のベンチに座った。

「今日さ、うまくいったよな。」

「うん。」

暗くなった空を見上げて、和輝が話し出す。

「俺さぁ、正直『お前がお姫さまになりたい』って言ってたの、バカにしてた。

だけどな今日やったシンデレラもそうだけど、

姫は一度引き離されてもずっと王子だけを思ってるんだ。

それって超カッコいいよな。」

私は何も言えず、黙って和輝を見つめていた。

「俺、思ったんだけど、シンデレラに出てくる王子も十分カッコいいよな。

1つしかない手がかりで一晩だけ踊った女を探し出すなんて…

でな、俺も王子になりたいと思った。

そしてやっと見つけた。」

ふぅーっと息をついて和輝は私に向き直る。

「咲…俺と、付き合ってください。」

私の頭がついていけてない。

でも、何かいわなきゃ。

「へ、返事なんて、決まってるじゃん。」

可愛くないね、私。

「だって私も、和輝のことが……好きだから。」(完)
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