これは、恋じゃない。(完)
――…
――目の前で大きな手が上下するのが見えて、私はハッと顔を上げた。
「!」
日向くんと目が合う。
「平野?何かボーッとしてる?」
ヤバい、トリップしちゃってた!
「あっ、ううん!良かったね!日向くん嬉しいでしょ?」
彼女が帰ってくるんだもんね。
嬉しいに決まってる。
「嬉しいのは平野だろ?仲良かったもんな」
「―うん。だね!」
はぐらかされた、かな。
…実は日向くんと鈴ちゃんが付き合ってるって話を、日向くんと直接したことがなかったりする。
日向くんも自分から話さないし、恋バナはしないタイプなのかもしれない。
まぁ、されても…ツラいだけだけどさ。
鈴ちゃんとはたまにするメールで『彼氏できた?』なんて聞かれるけど、いつも私は誤魔化して話を変える。
『鈴ちゃんは順調?』…とも聞いたことはない。
…聞けないもん。
二人のことだから離れていても、順調なんだろうけど。
鈴ちゃんが戻ってくるのは嬉しい…
でも。
直接二人の姿を見なきゃいけなくなるのは、やっぱりツラいよね…。