これは、恋じゃない。(完)
「彼方は?一緒じゃないの?」
鈴ちゃんから日向くんの名前が出てきて、ドキッとする。
「あ、うん。まだみたいだね」
「一緒に来ればいいのに。今もお隣さんなんでしょ?」
「そうだけど…。あ、ほら、私買い物したかったから!」
…なんてのは言い訳。
ほんとは気持ちを落ち着かせたくて、早めに家を出た。
日向くんと会わないように、って。
一緒に歩くなんて、緊張するし。
「あれ?二人とも早くない?」
「!」
不意打ちで聞こえてきた日向くんの声に、私の身体はビクッと揺れる。
「彼方!」
「よ」
笑顔を合わせる二人。
そして、『久しぶり』がない挨拶。
それだけのことなのに、私の心を突き刺す。
やっぱりここに来たのは間違いだったのかもしれない…。