これは、恋じゃない。(完)
 

前髪を手で掻き分けながら、話題を考える。


店内を目だけで見渡すと、ちょうど時計が目に入ってきた。





4時だ。


ちょうどいい時間かもしれない。


「……あ、もうこんな時間!?二人ともごめんね?私ね、もう帰らなきゃいけないんだ。夕方から用事入ってて」


「え、美里?」


「平野?」


わざとらしかったかな、と不安になる。


鈴ちゃんと日向くんの視線が痛い。


でも、ここは堪えなきゃ。


「鈴ちゃん話せて楽しかった!鈴ちゃん帰ってくるの、楽しみにしてるね?後は二人で楽しんで。じゃあ、ありがとね」


口を挟ませないように、早口でしゃべりながら、バッグを手に取る。


どこか冷静な私がいて、私ってこんなに早口で話せるんだ、って思ってた。


「じゃあねっ」


私はパッと二人に手を振って、その場から立ち去る。


「待って、美里…っ」


鈴ちゃんの言葉が聞こえたけど、それを振り切って、店を出た。

 
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