これは、恋じゃない。(完)
 

「……そっか…。平野には直接言ったことなかったっけ。俺と鈴のこと」


「―――…」


日向くんは顔を上げ、私を諭すようにゆっくりと話し始める。


…『鈴と付き合ってるからごめん』…そう言われるんだ。


日向くんの口からは聞きたくなかった言葉。


でも、日向くんの口から出てきた言葉は思いも寄らないものだった。


「―――鈴は…友達だよ。それ以上でも、それ以下でもない。……確かに少しだけ『女として見た』期間はあったけど…俺の気持ちは変わらなかったから」


「!?」


耳を疑った。


「ふ、二人って付き合って…」


私の言葉に、日向くんはゆっくりと首を横に振った。


「付き合ってないよ?…鈴に告白されたことはあったけど、断った。その時に『とりあえず1ヶ月だけ付き合って、それから返事がほしい』って言われて1ヶ月だけ一緒にいたけど、俺の中で鈴のことは恋愛対象にはならなかった」


「―――…嘘……だって、そんなの…あんなに魅力的な子なのに、何で」


鈴ちゃんを好きにならない男の子なんているはずがない。


「………平野が俺をそうさせてるんだよ?わかってる?」


「―――わっ、私っ!?」


何でっ!?


急に出てきた自分の名前に、私は驚いた。


そんな私を見て、日向くんはプ、と笑った。


「そろそろ気付いてくれると嬉しいんだけど。俺の気持ち。」

 
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