これは、恋じゃない。(完)
 

「俺は平野とは、ただのお隣さんっていう関係は嫌。幼なじみも嫌。クラスメートも嫌。友達も嫌。なりたいものは、ひとつだけ」


「―――…」


日向くんの指が私の頬を流れる涙を拭う。


「俺の彼女になって?…俺を…美里の彼氏にしてよ」


「―――!」


…ずっと、呼ばれたかった名前。


…ずっと、欲しかったその場所。


どんどん涙が溢れてくる。


その温かさは感じるのに、現実とは思えないくらい、フワフワした感覚。


「……夢…?」


つい口に出てしまった言葉だった。


「……現実だから。信じてよ」


日向くんの手が私の頭にポンと乗る。


ずっと欲しかった手が、私に触れてくれている。


私は日向くんの顔を見上げた。


そこには…優しい笑顔があった。


私の中に、大好きって気持ちが溢れてくる…。

 
< 29 / 38 >

この作品をシェア

pagetop