これは、恋じゃない。(完)
「俺は平野とは、ただのお隣さんっていう関係は嫌。幼なじみも嫌。クラスメートも嫌。友達も嫌。なりたいものは、ひとつだけ」
「―――…」
日向くんの指が私の頬を流れる涙を拭う。
「俺の彼女になって?…俺を…美里の彼氏にしてよ」
「―――!」
…ずっと、呼ばれたかった名前。
…ずっと、欲しかったその場所。
どんどん涙が溢れてくる。
その温かさは感じるのに、現実とは思えないくらい、フワフワした感覚。
「……夢…?」
つい口に出てしまった言葉だった。
「……現実だから。信じてよ」
日向くんの手が私の頭にポンと乗る。
ずっと欲しかった手が、私に触れてくれている。
私は日向くんの顔を見上げた。
そこには…優しい笑顔があった。
私の中に、大好きって気持ちが溢れてくる…。