これは、恋じゃない。(完)
 

「どうやったら、この気持ち忘れられるのかな。全部忘れられたら楽なのに」


私は頬杖をついて、紗耶香にだけ聞こえるくらいの小さな声で呟いた。


「みさ…」


「何?平野、記憶喪失になりたいの?」


突然聞こえてきた声に驚いて振り向いた。


いつの間に女の子達の群れから抜け出してきたのか、すぐそこに日向くんがいた。


「えっ、あっ、日向くんいつからそこに…!?」


どこから聞かれた!?


私は焦る。


「『全部忘れられたら』しか聞こえなかったけど…何?聞かれたくない話でもしてたの?」


ニヤニヤと私の顔色を窺う日向くん。


「いや、そんなことは…」


ありますけども。


聞かれてないなら良かった…。


私は心の中で胸を撫で下ろした。

 
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