志緒少々

あれはたしか、私、坂井志緒がバリバリの女子大生であり、

バリバリのギャルだった頃。

季節は冬で、すぐそこに迫っていた試験のために、

友達とみんなで勉強をしていた時でした。

勉強を邪魔するがごとく、電話が鳴りだしたのです。

ディスプレイには知らない番号が表示されていましたが、

もしかしたら誰かが番号を変えたのかもしれないと思い、

電話に出ることにしました。

「もしもし」

相手は男性でした。

「新日本債券の井上と申します」

「はあ」

債券会社?

株を買えとか、ファンドを勧めたりとか、

どうせ変な営業だろう。

勉強を邪魔された私はこの時点でかなり警戒していました。

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