だから、笑わないで。



憂の母親はしろくて長いワンピースに長い黒髪を束ねていた。



「いったいどうしたの?」



憂の母親はパタン、とドアを閉めながらリンに聞く。
リンは黙って靴を脱いだ。
そして憂の母親が出してくれたスリッパを履く。




「やだ…誰かくると思っていなかったから、ちらかっているのよ。ごめんなさいね」



そう言いながら通してくれたリビングはいつも通り綺麗だった。
キッチンの流し台にはひとりぶんの洗い物があった。



「お昼ご飯を食べおわったところなの」
「…あ…タイミング悪いときに来ちゃってすみません…」



リンが謝ると、憂の母親は憂とそっくりな笑顔で笑って言った。



「そんなことないわよ!それよりリンくん、ご飯は食べた?」
「…あ…いえ…」
「なら食べてって!材料あまっちゃって。あの子がいるときみたいによぶんに買っちゃったのよ…」



さっきまで明るかった憂の母親はフッと悲しげな表情に一瞬なったあと、いつも通り料理を作りはじめた。
数分後、憂の母親がテーブルに料理を並べはじめた。



「あっ、手伝います…」
「あ、いいのよ!大したものじゃないし…」



リンが手伝うまえに全ての料理を並べおえ、コップにお茶を注ぎおいた。



「ありがとう。いただきます!」
「デザートもあるの。憂が好きだった抹茶プリン!」
「…………………」



リンは黙ってはしをもち、食べた。
いや、なにも言えなかったのかもしれない。
テーブルには、すべて憂が好きだった料理だたからだ。




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