だから、笑わないで。
屋上の空はいまにも雨が降りそうだった。
どんよりした雲の下にふたりは並ぶ。
「杏子、どうしたの?」
「………なんかわたしにいうことは?」
「………………たとえば何?」
レンは杏子から目をそらすと、落ちていた紙くずをひろった。
「憂と別れたんでしょ?」
「………そうだね」
「レンくんはひどいよ!!」
「………知ってる」
レンはその紙くずを破り、強風と一緒にとばした。
どこまでも飛んでいく紙くず。
「憂がだめになるって知ってて憂を捨てる!別れるなら、どーして永遠を誓ったの?!どーして結婚しようなんて言った?!なんでだいすきっていって、何で付き合った?!」
杏子はこれまでにないくらいの剣幕で怒鳴り続ける。
「付き合うって、両想いってすごいことなのに、レンくんと憂にいつまでも続いてほしかったのに…」
杏子は涙をためながら言う。
レンはしばらく真剣にみていたが、すぐに鼻で笑って言った。
「……それは俺らを祝福してたわけじゃないだろ?リンのことが好きだから、俺と憂が続けばいいと思ったんだろ?」
冷めた目で杏子を見下ろすレン。
杏子はその目に恐怖を覚えた。