だから、笑わないで。
杏子はなにも言わずにあたしを家まで送ってくれた。
今日あんなことがあったのを気遣ってくれているのだろう。
「さ、家入ってきょうはゆっくり休みな!」
「………うん…」
「………憂…?」
あたしはあふれる涙を見せたくなくて杏子に抱きついた。
「……憂……」
「…………レンくん……美亜ちゃんみたいなこがよかったのかなぁ…っ…」
「!」
「………あたし……美亜ちゃんみたいに明るくない…っ……人見知りもするし、髪色も…っ」
「………憂…!憂は憂でいいでしょう……!」
異常に震えながら泣くあたしに杏子は焦りながら抱き締め、フォローをする。
だけどあたしの震えはおさまらなかった。
「……ずっとむりしてたんだ…!!どうしようどうしようどうしよう…!」
「……憂…!……それは違う…!」
息をするのが苦しくなってきた。
思わず咳き込む。
ハアハアと肩で息をしても、息苦しさはかわらない。
酸素をとりいれられなくなっていく。
「……ぅ……あ……っ!…ハアハア…!」
「どうしたの憂!!苦しいの?!待ってていま楽に………っ!」
杏子は震える手で携帯を取り出してどこかにかけ始めた。
「……………くん………ンくん……!!」
「……レ…ん…く……ん………やっぱり……きてく……れ…」
あたしはゆめのなかのレンくんにつぶやき、静かに目を閉じた……