だから、笑わないで。



ようやく美亜も泣き止み、俺もいらいらがおさまった。
とにかく、こんなのはダメだ。
美亜を完璧憂と重ねてしまっている。




「……美亜…もう別れよう」



これしか思い付かなかった。
美亜を傷つけ続けるなんてできない。
すると美亜は弁当のおかずを口に詰め込んだまま固まった。

しばらく呆然のようにそうしていたがいきなり糸が切れたように泣き出した。



「やだ!!やだよ!なんで?!」
「……ごめん………」
「やだやだやだ!レンが嫌なとこ、全部なおすから、そんなこと言わないで!」




必死そうな美亜をみて俺は我慢できなくなった。



「違うんだ、美亜!美亜がわるいわけじゃない。俺やっぱり憂を忘れられない」
「……え…」
「…………ごめん……」



俺は地面につくくらい頭を下げた。



「そんなの知ってるよ!あたし、憂ちゃんとレンが付き合ってたときからずっとレンのことがすきだったんだから」
「……え…」




美亜は泣きながら真剣な顔でいった。



「あたし、女としても人間としても、憂ちゃんに完敗だと思う。でもかってみせるよ。憂ちゃんのかわりでもいいから…だから別れるなんて言わないで…」





美亜は手で顔を覆って声を殺すように泣いた。
ずきん、と胸が痛む。




「……わかった…ごめ、んな」




俺は美亜の頭をなでた。






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