だから、笑わないで。



帰り際、久しぶりに憂の笑った顔をみた。
リンと杏子のもとへ駆けていき、帰っていった。
すこし前まで俺もあのなかにいた。




…もうあの場所へは戻れない。




俺は静かにそう思った。





家へ帰ると久しぶりにリンと顔をあわせた。
でもなにを交わすこともなく、素通りだ。
俺が散々冷たくしたからか、リンはしゃべりかけてこなくなった。
当然だよな。




俺はふっと自虐的に笑った。




「………レンっ」






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