だから、笑わないで。


ぷつりと糸が切れたように俺の目から涙があふれでる。
憂はまた夢の中。




大量の涙が憂の頬にも落ちた。
憂は目を覚まさなかった。





憂はもう涙を流さなかった。
俺だけだ。いまだに進んでないのは。




「………進まないと…」








そういってみたものの、進むなんてむりだ。
憂をわすれることが進むということなら、俺は進まなくていい。
俺はもう、進めない。






憂の頬に、おでこに、さいごに唇に。
キスをして俺は憂をひとりのこして憂の家を出た。


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