だから、笑わないで。
春。
桜が舞うなか、俺は人で溢れかえる、学校にいた。
となりでは俺を退屈させまいとレンがしきりに話しかけてくる。
俺は適当に相づちを打ちながら、憂と杏子が戻ってくるのを待っていた。
俺は人混みが大嫌いだ。
なぜって、人間があまり好きじゃないからだ。
信じてる人といえば、レンと憂、それから杏子ぐらいだろう。
俺は極力人間を避けていた。
十分ほど待つと、ふわふわロングの栗色に染めたての髪を揺らしながら、走ってくる可愛らしい女の子を見た。
その後ろからは、黒髪ストレートの美人の女の子が歩いてくる。
そう、これがさっきいった憂。
フルネームは天野憂。
黒髪美人が、鈴原杏子。
「おまたせ…っ、レンくんリンくん…っ」
憂は息を切らしながら、笑顔で言った。