だから、笑わないで。



とたんに俺の胸は暴れ始める。
押さえつけても、直ってくれない。


仕方なく気持ちを紛らわすため、イヤホンをつけ、音楽を聴いた。


憂はレンに笑顔で話しかけ、嬉しそうに手を握った。


ちくん、と胸に痛みを覚えた俺は、何も見ないために目をつむった。


耳には大量の音楽。
視界はゼロ。


俺は現実から逃げた。


俺の名前は笑原カリン。
高校二年生。



レン、憂、杏子、俺は一年で同じクラスだった。

レンは俺の兄貴。
本名は笑原カレン。
レンは5月生まれ、俺は6月生まれだった。

憂とは昔からの幼なじみ。
杏子は一年のときに憂の親友として紹介され、仲良くなった。

杏子と俺の考え方は似ているから好き。
だから杏子本人も好きだった。


そして何より、憂の親友だ。
仲良くしないわけにはいかない。


それも理由のひとつだった。



いま一番願っていること。
それは…
レンたちと、クラスが離れること。


それだけだ。



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