だから、笑わないで。



この気持ちを押さえることは、すでに限界まできていた。

リンが憂を求めれば、みんな傷つく。

いままで必死に守ってきたものが崩れていく。
あのはじめて雪が降った日に守っていくと決めたものすべて。


手を伸ばせば届くのに、手を伸ばせば後悔することはわかっていた。


強引に憂を手に入れられたらどれだけ楽になるのだろう。
自分の想いをキッパリ伝え、そしてふってさえくれれば。
リンも諦めがつくのだろう。
だけどそうできない理由がリンにはあった。
リンが憂を好きだと、レンが知ってしまったら、レンは確実に憂と別れてしまう。

たとえ知らなくてもふられたということを知れば、申し訳なく思って別れるのだ。


そうすれば憂とレンは想いあったまま別れる。
想いあっているふたりを別れさせていい理由などどこにもない。


ふたりの悲しむかおをみたくはない。


結局、邪魔者は自分だとリンは考えていた。




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