だから、笑わないで。
リンくんは池の鯉にエサをあげていた。
パンを小さくちぎって池に投げている。
「リンくん」
「……杏子」
パンをちぎっていた手を止めてリンくんはこっち向いた。
わたしは近くにあったベンチに座った。
リンくんもパンをぜんぶやるとわたしのとなりに座る。
「………大丈夫?」
「…………」
「………つらかったでしょう…リンくんは優しいから」
「…………………俺、優しくない」
リンくんはつらそうに顔を歪め、言う。
どうして?
じぶん以外のことを考えて、顔を歪められる、あなたはこんなにも優しい人なのに。
「………優しいよ。気付いてないだけで…」
わたしが言うと、リンくんは言った。
「………俺は……どうするべきだった…?」
「…………え………」
「………憂を泣かせたいわけじゃない。レンを困らせたいわけでもない。こんなの俺はただのガキだね…」
「…………リンくん…」
リンくんは顔を覆ってうつむいた。