だから、笑わないで。



「………俺、尊敬できるとこなんてひとつも持ってないんだけど?」



笑いながら言うリンくんにあたしは言った。


「…幼い頃からずっと一緒にいて、レンくんたちが付き合って、それなのに平気そうにずっと傍に居て、憂にもレンくんにも優しくして…そんなこと、普通出来ないと思うの」
「…………全然わがままばっか言ってるよ…」
「そんなリンくんが大好き!リンくんが笑ってくれるだけで幸せ!」
「………………………」



わたしは笑って言う。
満面な笑顔だと思いたい。



「…………俺も…杏子みたいになりたかった」
「え?」
「………どんなに頑張っても杏子みたいになれない。俺はつらいだけだ」


そんなふうに思ってたんだ。
わたしだってすべてが幸せなわけじゃない。
リンくんが憂をみながら笑ってたらつらいだけだよ。



「……………でも」
「…………………………」
「………でも…好きな人が笑うと嬉しい…この気持ちは同じでしょう……?」



あたしが言うと、リンくんは小さな声で



「…………うん……」



って言った。



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