だから、笑わないで。



わたしは黙って憂の前に腰をおろすと、頭を撫でてやった。
すると憂は顔をあげた。




「………ふふっ。なに泣いてんのよ」
「…………杏子かあ……」
「……そんなかおしないの!泣かないの!」



わたしはポケットからハンカチを取り出すと、トントンと涙をふいてやる。



「………ありがとう…」
「メソメソしてたらみんな心配するよ!」
「……心配なんかしないよ……あたし、リンくんに嫌われちゃったんだもん……」
「……………………」



憂はじぶんで言ったくせにぼろぼろと涙をこぼした。



「杏子は仲良くていいなぁ~…あたしはどうしたらいいのかわからなくて…笑ってくれないし、嫌われちゃったぁ……」



女からみても可愛い憂は涙を流しても可愛い。
惚れ惚れするほどだった。



「……あたし杏子みたいなこになりたかったな…」
「どうして?」
「…だって…リンくんも仲良くしてくれるしレンくんともなかいいし…」
「あはっ、そしたらレンくんとも付き合えないんだよ?」
「…………それでも…リンくんとレンくん、三人で仲良くしてれば…それで…よかった…」



憂はまたはらはらと涙を流した。
わたしは微笑みながら言った。



「…………わたしは憂になりたいよ」
「……なんでえ…?」
「…………内緒」
「…なにそれぇ…」



だって、憂になれば、リンくんが愛してくれる。
愛してあげられる。
だから、だよ。



まだ憂には内緒だけどね。





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