だから、笑わないで。
―第五章―レンside
きのうは大変な一日だったな。
俺は肩をコキコキならしながら思った。
朝起きて下に行くと、リンの姿はもうなくて、先にいったと言われた。
そのため憂とふたりで歩いていた。
憂はリンに避けられてるからか、悲しげな表情で無言で歩いている。
「うーい!」
「ひゃぁ…っ」
俺は憂を後ろから抱きしめると、憂はビクリとする。
「俺、頑張るから!必ずリンから聞き出すからさ!だから、そんな悲しそうな顔しないで?」
「………え…」
憂はびっくりしたように俺を見る。
「………それに今日は三年記念日だよ!笑ってよ!」
俺は憂の前に回り込み、にっと笑ってみせた。
すると憂も微笑んでくれた。
「……レンくん……ありがとう……」
俺はそのまま憂にキスをする。
いつぶりかのキスだ。
サラサラの憂の髪。
手を通すのも久しぶりだ。
「………………」
「………………」
唇をはなし、憂の耳元でささやいた。
「………大好きだよ…」
再び憂に視線を戻すと、真っ赤で恥ずかしそうにしていた。
「フッ、いこー♪」
俺はそんな憂の反応に満足し、手をつないで歩く。
記念日くらい、いちばん大好きな人には笑っていてほしい。