だから、笑わないで。



今日一日、憂とも杏子ともしゃべらなかった。
俺が無意識に避けていたのかもしれない。



帰宅時間になり、俺はカバンをもって深呼吸する。
そして憂をよんだ。




「憂!」





憂はえ?といったかんじでおれをみた。



「一緒に帰ろ!」




クラスみんながいるなかで、リンと杏子も聞いてるなかで、俺は言った。
憂が嬉しそうに歩いて俺の手を握った。

去るときにみたつらそうなリンの顔。



やっぱり。
やっぱりお前も憂が―…





「レンくんっ!距離おこうっていってたのにどーしたの?」





憂は笑顔で聞いてきた。
俺は一瞬固まってしまったが、すぐに笑顔で言った。




「まあいいじゃん!それよりあそこ寄ろうぜ!」





俺が指した先には憂の大好きな雑貨やさんがあった。
いつも嫌がっていたが、今日はじぶんから提案をする。




「えっ?いいの?」
「おう!なんでも買ってやるよ!」
「え…っ、どうしたの…?」
「…べつに!今日、へそくりみつけたから♪」





下手な嘘をつきながらも俺はぐいぐいと憂を引っ張っていく。
憂は異変を感じたのかあまり元気がなかった。



ウェンディングドレスをきた男の子と女の子のクマのぬいぐるみのセットを無理矢理選ばせて買ってやった。
結局、買い物はそれだけだった。






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