だから、笑わないで。




一番近い自動販売機は下駄箱の近くだったため、中庭のなかの体育館通路を通った。


俺のクラスの体育はバスケットなんだろうか。


なかからボールを使う音がした。



ガサッ


「!」



体育館通路を通っていた俺は茂みから音がした瞬間、とっさに身をかくした。
先生にばれると厄介だからだ。


だけどでできたのは一組のカップル。


目が悪いため、誰かはわからなかった。


会話からは彼女が必死なようだ。
興味がない俺は忍び足でその場をあとにしようとしたとき。



「……れは……憂が…だから……」



聞き覚えのある声に足を止めた。
このこえは、レン。
いま、俺は憂が好きだからと言ったような気がする。
告白されていたのか。



「………かってる……でも……」



彼女は涙を流している。




「……けど…っ…お……い……抱きしめて…」



「……………!」



俺はその場を去った。



後ろからは、ザッと歩み寄る音がきこえた。





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