だから、笑わないで。
杏子は思い出したようにバッグから箱を出した。
「ケーキも買ってきたの!はい♪」
ケーキの箱を憂に手渡すと、憂はそれを受け取りながら申し訳なさそうな顔をした。
「…なんか…ごめんね…気をつかわせちゃって…」
「なにいってんの?わたしがタベタカッタだけだし、気なんか使ってないし!ね、リンくん!」
「当たり前」
杏子とリンは椅子に座りながら言った。
「……うん…あ、じゃあお茶いれるね」
ケーキの箱からケーキを取り出しながら憂はベッドを立とうとする。
「わたしがやるから憂は寝てて!」
「え…あたしもう大丈夫なんだよ~?」
「でも入院中なんだからだめ!」
「ええ~?あたし太っちゃうよ。もうこんなに元気なのにどうして退院できないの?」
「………もう退院できるよ」
憂にはパニックのことをいっていないため、言葉につまりながらも杏子はなんとか乗りきり紅茶をいれた。
「リンくん、ごめんね…毎日毎日」
「…嫌だったらこないから。俺暇人だしね」
「あは、リンくんいっつも忙しいくせに~」
「…そんなことないよ」
リンと憂はクスクス笑いながら会話に華を咲かせる。
嬉しそうなリンの声と、楽しそうな憂の声を杏子はお茶を準備しながら背中で聞いていた。