そして優しい~番外編~
「この制服、微かに章弘の匂いがする」
ああ、できるだけ冷静に言おうと思ったのに……出て来た発音は拗ねてるようなニュアンスに聞こえる気がする。
いくら秘密の関係だからって、美雪は俺の彼女なのに……なんで他の男の匂いなんか……ああっ、もうっ!
俺は自分のスーツのボタンを外し、美雪のブレザーをそのスーツの中に包み込んだ。
誰かに指摘されてもかまわないから、俺の香りをつけてやる!
「涼……あの……何してるの?」
「匂い付け……おまえは俺のもの、って」
正直、自分の匂いって分かんねーけど。
しかも、俺って人工的な香りはあまり好きじゃないから、コロンだとか香水だとかつけねーし。
それでも、他の男の香りがしたままは我慢できない。