君が恋に落ちるまで。




ミラー越しに慧が駅の方へ
走っていくのが見えて、
あたしはすぐに目を逸らして
・・・・前を向いていた。




「 ・・・ごめんね 」


「 ・・・え? 」


「 時計、勝手に返しちゃって 」




”いえ”と首を横に振れば、
もう一度”ごめんね”と
悠也さんが謝って、




「 ・・・ありがとうございました 」




バカなことをする前に
止めてくれて。




苦笑する悠也さんの手が
髪に触れて、梳くように
撫でられた。




「 ・・・・・・頑張ったね 」


「 ・・・・ッ 」


「 もう、大丈夫だよ 」




ずっと我慢していたそれは、
悠也さんのたった一言に負けて
ボロボロと零れ落ちた。






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