君が恋に落ちるまで。
人の少ない玄関は
薄暗く、肌寒い風が
通り抜けていく。
この空気は、苦手。
「 瑞穂、行こう 」
「 ・・・・加奈 」
「 だって瑞穂、辛そうだよ 」
あたしの手を掴んで、
グイッと引っ張る加奈は
慧からあたしを遠ざけようと
必死だった。
「 ・・・・いいの 」
「 よくない 」
「 だって、あたし・・・っ 」
「 一人で抱え込んで体調崩すんなら
早く話して楽になりなよ!
待ってるんだから、あたしは 」
加奈は、あたしが聞いてほしくないことを
絶対聞いてこない。
あたしの中に深く入り込まない。
一人の時間を与えてくれる。
気ままなあたしを理解してくれる
たった一人の、唯一の友達だった。