君が恋に落ちるまで。
「 ・・・奏多さん 」
バーで見たときより
髪色が明るく見えるのは
夕日のせいだろうか。
その明るい髪を揺らして
彼はあたしに近づくと
耳元に口を寄せて、
「 ちょっと付き合ってくれない? 」
それほどのことでもないのに
その声は低く、甘く響いた。
加奈には聞こえていないんだろうけど
この格好は、まずい。
「 ・・・あたしも、奏多さんのところに
行こうと思ってました 」
「 ははっ!それはよかった。
車乗って? 」
近くに停まっていた赤い車の
ドアを開けた奏多さんが
笑いながら”ほら、早く”と
首を傾げて、
「 ・・・何で車なんですか 」
あたしがそう言えば、
奏多さんはケラケラと
可笑しそうに笑い出した。