君が恋に落ちるまで。




「 ・・・奏多さん 」




バーで見たときより
髪色が明るく見えるのは
夕日のせいだろうか。




その明るい髪を揺らして
彼はあたしに近づくと
耳元に口を寄せて、




「 ちょっと付き合ってくれない? 」




それほどのことでもないのに
その声は低く、甘く響いた。
加奈には聞こえていないんだろうけど
この格好は、まずい。




「 ・・・あたしも、奏多さんのところに
  行こうと思ってました 」


「 ははっ!それはよかった。
  車乗って? 」




近くに停まっていた赤い車の
ドアを開けた奏多さんが
笑いながら”ほら、早く”と
首を傾げて、




「 ・・・何で車なんですか 」




あたしがそう言えば、
奏多さんはケラケラと
可笑しそうに笑い出した。







< 151 / 245 >

この作品をシェア

pagetop