君が恋に落ちるまで。
「 送ってくれてありがとうございました 」
未だに、手は悠也さんのポケットの中で
引き抜こうと少し力を入れれば
グッ、と掴んでいた悠也さんの手に
強く握られた。
「 ・・・・大人なんかじゃ、ないよ 」
「 ・・・・え? 」
苦笑した悠也さんは”ごめんね”と
ポケットの中から手を出して、
だけど手は掴まれたままで、
首を傾げたあたしを見て、
何度目かの”ごめんね”を言った。
「 瑞穂ちゃん・・・ 」
引き寄せられた体。
温かい悠也さんの腕の中は
悠也さんの匂いでいっぱいで、
抱きしめ返すこともできずに
ただ顔を悠也さんの胸に埋めていた。
「 ・・・・・・っくしゅ 」
「 寒い?ごめんね、引き止めて 」
「 ・・・・いえ、そんな・・・ 」
「 じゃあ、俺行くね?
おやすみ、瑞穂ちゃん 」
あっさりと離されて、”おやすみなさい”と
手を振れば悠也さんは来た道を
戻っていった。