君が恋に落ちるまで。
「 ・・・・もう負けた気でいんの? 」
「 当たり前だろ 」
「 何で? 」
「 ・・・なんでって 」
元々慧くんが好きで仕方なかった
彼女のことだ。
今までのことは俺と慧くんを
重ねていたっておかしくはない。
「 お前が勝ったらコレやるよ 」
「 ・・・捨てろって言っただろ 」
出てきたのは、あの日置いていった指輪。
あの日と違って空のグラスの中に
入っているが、間違いなく俺が
彼女に渡した指輪だった。
「 もう捨てられるんじゃないの?
ただの上司と部下、それ以上でも
それ以下でもなくなったんだし、
未練なんて全くだろ 」
・・・・・未練。
引きずる暇もなく彼女に出会ってしまったから
この指輪のこともすっかり忘れていた。