君が恋に落ちるまで。
あの日、確かに俺は少し
落ち込んでいたし、
酔い潰れたい、と
ヤケになっていた。
風景はいつもと変わらない。
俺の気分が落ちようと、
フラれようと、
何も変わらない。
ただ、あの日、そんな自分と
同じ彼女を見つけた。
「 ・・・・おい、悠也? 」
ハッ、として顔を上げて
周りを見渡す。
少し前の会話を思い出すつもりが、
あの日、あの時の彼女の横顔が
頭を過ぎって、
「 いや、やっぱり慧くんは
忘れられないと思うよ 」
濡れた瞳、長い睫。
その白い肌を濡らす涙は
慧くんを想って、溢れ出た
彼女の感情だろう。