君が恋に落ちるまで。
「 瑞穂さんと慧ちゃんって
幼馴染とかそういうの? 」
クイッと袖を引っ張った彼女が
慧を見上げてそう聞いて、
渡されたハンカチを使わずに
あたしはそっとポケットにしまった。
「 あー・・・元カノ? 」
鞄を拾い上げて、
あたしは精一杯の笑顔を向けた。
「 心配するほどの関係じゃないですよ。
ハンカチ、ありがとうございました。
今度慧に返しておきますね。 」
早く、帰ろう。
どこかに溜まった涙が
溢れ出さないうちに、
───────────早く・・忘れなくちゃ。