君が恋に落ちるまで。
グラスを傾けながら、
他のお客さんとも話す彼を
そっと盗み見ていた。
なんとなく、・・・どこかが似ている。
慧の方が身長は小さいし、
髪だって慧の方が短い。
店内が暗いからか、
彼の髪の色が慧と同じ色に見えて、
「 ・・・ねぇ、もっと 」
息苦しくなった。
「 顔、赤いけど 」
「 大丈夫だから・・・もっと 」
あたしは何も知らない。
そう目を瞑って、耳を塞いで、
現実から逃げ回っていた。
逃げ延びられるわけなんてないのに。