君が恋に落ちるまで。
「 ”いつもの”だろ? 」
とっさに目を逸らしたあたしは
スプモーニを一気に飲み干して、
人差し指をたてれば、苦笑しながら
彼は”了解”とグラスをさげた。
「 ・・・いや、今日はいいよ 」
「 へぇ、珍しい 」
「 ・・・ギムレット 」
高そうなスーツに身を包んだ彼は
ネクタイを緩めながら小さく
溜息を零した。
「 疲れたときに飲むもんじゃ
ないよ、ソレは 」
「 疲れてるわけじゃないから 」
「 そんな顔してんのに? 」
何度目か分からないスプモーニを
あたしに出しながら、ケラケラと笑っていた。
「 悠也、明日仕事は? 」
「 休み 」
「 じゃあ自分へのご褒美か! 」
「 ・・・ただの慰めだよ 」
”ギムレット”を作りながら
彼は少しだけ顔を歪めた。