君が恋に落ちるまで。





「 あぁ、ごめんね、なんだか
  しんみりさせちゃって 」


「 ・・・いえ、あたしも・・・ 」


「 え? 」




悲しそうに笑った悠也さんが
指輪の入ったグラスを自分の
少し前において、”いつもの”
と彼に言った。




「 あたしも、指輪だったら
  同じことしてました 」


「 ・・・指輪だったら? 」


「 ・・・時計、なんですよね 」




未練たらしくつけているのは
恥ずかしいことなのに、
あたしはソレを堂々と二人に見せた。




「 君、名前は? 」


「 ・・・瑞穂 」


「 瑞穂ちゃん、俺は悠也、
  なんだかすごい偶然だね 」




目の前で黒髪が揺れて、
悠也さんが柔らかく笑う。
男の人なのに、あたしは
”綺麗”だとその瞬間思った。







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