君が恋に落ちるまで。
タクシーを降りて、
行きつけのバーのドアを開ける。
11時過ぎにもなれば
客もいないだろう、と
どこかで詰まっていた
溜息を吐き出した。
「 ・・・もっと 」
薄暗い店内に響く女性の声。
かなり酔ったような甘ったるい
その声と言葉に、一瞬体が強張った。
俺の席の隣に座った女性は
頬杖をつき、奏多との会話を
楽しんでいるようだった。
「 ・・・・隣、いい? 」
「 ん、・・・どうぞ? 」
とろん、とした目で俺を見上げて
へらっと笑う彼女は今さっきまで
一緒にいた彼女のように見えた。
随分酔っているのに
ペースが速い。
「 ・・・ギムレット 」
飲むつもりもないが
たまにはハメを外して
ひどく酔うのも悪くはない。