君が恋に落ちるまで。
自分への慰めだと言えば
奏多はすぐに俺が今、何を
してきたかが分かったらしい。
「 ・・・お疲れ 」
俺にグラスを差し出しながら
そう言って苦笑した奏多から
目を逸らして、グラスを受け取った。
高遠奏多[タカトウ カナタ]。
チャラそうに見える割に
バーテンダーとしての
腕はなかなか良い。
話し上手で聞き上手。
属に言う”イケメン”だ。
「 ・・・勿体ねぇ 」
彼女に突返された指輪を
グラスの中に落とし、
結局俺はいつもと変わらない
ジントニックを口に含んだ。
「 君、名前は? 」
「 ・・・瑞穂です 」
見た感じ、キャバに居そうな
イメージな彼女はどうやら
酒が弱いらしい。
おまけに俺と同じで今日
失恋してしまったようだ。