君が恋に落ちるまで。




「 ”他人なのに”って? 」




言葉とは裏腹に彼の表情は
相変わらず笑顔だった。
頷いたあたしの頭を優しく撫でて、
そのまま頬に添えられる。




「 他人とは思えなかったからね。
  ・・・それに、俺や奏多がもっと
  気をつけていたら潰れなかっただろうし 」


「 そんな・・・ 」


「 俺ね、偶然は信じないんだよね 」




”運命は信じない”




今のあたしの中ではそうだった。
好きな人と出会うのも、
その人を好きになるのも、
”運命”なんだと思っていた。




けどその理想が崩れて、見失って。




お酒で気を紛らわそうと
・・・いや、忘れようとしていた。




「 何かしら理由があると思わない? 」


「 え・・・? 」




頬に添えられた大きな手は温かい。
視線を逸らせば手が動いて、まるで
”こっち見ろ”って言うみたいに。






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